【Film Review】「マン・ダウン 戦士の約束」/帰還兵に対してアメリカが抱える社会問題を浮き彫りにした傑作

Man Down

「マン・ダウン 戦士の約束」 (原題:「Man Down」) (2015年・米)

監督:ディート・モンティエル

出演:シャイア・ラブーフ/ジェイ・コートニー/ケイト・マーラ/ゲイリー・オールドマン 他



アメリカが抱える社会問題を浮き彫りにした傑作

ヴェネツィア国際映画祭正式出品&トロント国際映画祭正式出品作品。
監督にシャイア・ラブーフとロバート・ダウニーJr.が共演した秀作「シティ・オブ・ドッグス」のディート・モンティエル。

愛する者を守ること。ただそれだけが、男の願いだった―。
妻と息子を残し、アフガニスタンへと赴任した海兵隊員ガブリエルは、戦地での任務を終え、故郷へと帰還した。
ところが故郷の姿は、以前とは変り果て、家族の姿もそこには無かった・・・。

祖国アメリカに尽くすため、イラク、アフガニスタンなどに派兵される兵士は、毎年数百を超えると言われている。
同時に帰還してくる兵士も数多くおり、戦時中に体験したことがきっかけとなり、心に傷を負ってしまう人も、後を絶たない。
それが現代のアメリカ社会が抱える大きな問題となっているのは、もはや周知の事実だ。
心的外傷後ストレス障害=PTSDは心に傷を負い帰還した兵士が幻覚を見たり、その後の生活を上手く送れなくなる精神疾患の一つだ。
これが原因となり、自殺をしてしまう兵士も多く、また、祖国に尽くしたにも関わらず、その後のケアに関しては一切行わない国の姿勢も、問題視されている状況だ。
そんな言わば社会問題と言える、帰還兵の事実を明確に浮き彫りにした作品が、この「マン・ダウン 戦士の約束」。

Man Down

これまで「アメリカン・スナイパー」や「マイ・ブラザー」など、PTSDや帰還兵の苦悩と葛藤を描いた作品は多く存在したが、本作が決定的に違うのは、その描き方。
現在と過去を織り交ぜながら、その中間の時間軸をも同時に進行させ、徐々に主人公が置かれている立場を明確にしていく。
これはかなり新鮮に映る。

Man Down

監督を務めたディート・モンティエールは、このような社会問題を描くことに長けた監督であり、2006年に製作した自らのデビュー作「シティ・オブ・ドッグス」もニューヨークのスラム街を舞台に若者たちの葛藤と現実を映し出し、高い評価を得た。彼が描き出す映像にはリアルさの中に登場人物たちの感情が切り取られたかのような情緒的映像が広がる。

Man Down

主人公の立場が明らかになるラスト7分46秒は、まさに心をえぐられる。
ラストに着地するまでに家族の絆や紛争地帯のリアル、さらには主人公が見る"世界"をしっかりと描き切っているからこそ、感じられる衝撃がある。
思わず魂を揺さぶられ、決して目を逸らしてはいけない事実がこの映画にはあるのだ。

シャイア・ラブーフ出演作の中でも目を見張る名演!

主演は、若手実力派俳優シャイア・ラブーフ

Shia LaBeouf

本作へ出演したことが、自分にとってのセラピーになったとも語っていた。
確かにここ数年、奇行ばかりが目立ち、映画ファンの間では、お騒がせ俳優として定着してしまっているのは否めない。
しかし、シャイア・ラブーフという俳優が持つ実力というのは、恐らくハリウッドの若手俳優の中でもトップクラスと言えるだろう。
その事を証明した演技を終始魅せていた。
本作に出演する前に「フューリー」という戦争映画に出演していたのだが、それが良い方向に作用しているのように感じる。
なぜなら、彼は一度戦争を"体験"しており、帰還兵の心を体現できるから。
「フューリー」の時に役作りで自らの顔を傷つけたという傷跡がリアルさを醸し出しており、主人公が体験した戦場のリアル、心に負ってしまった傷跡・・・これがシャイアの目や仕草からハッキリと伝わってくるのだ。
この作品を観れば、いかにシャイア・ラブーフという俳優が素晴らしい俳優なのかということを再確認できること間違いないだろう。
余談だが、本作は彼にとって初めての父親役だったのだが、しっかりと父親業をこなしており、その辺りも魅力を感じた。

Shia LaBeouf

妻を演じるケイト・マーラ、兄を演じるジェイ・コートニー、上官を演じるゲイリー・オールドマンなども良いパフォーマンスを魅せるが、ハッキリ言って、シャイアの名演を前に印象が薄くなってしまっているのは確か。

戦争をメインとして扱わず、帰還した後を中心としているところが高評価。
監督、キャスト含め製作陣の国に尽くした人々への敬意が存分に伝わってくる作品であった。

評価:★★★★★★★★☆☆



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