[新作映画批評]実際に起きた奇跡的な事件を描く。「捕らわれた女」

Captive

今回は、2005年に実際に起きた事件を描く、「捕らわれた女(Captive)」の批評

薬物依存に苦しみ、娘を奪われた、シングルマザーのアシュリー。
再出発の為に引っ越してきた彼女は、ある夜、家の片づけをしていると、何者かに人質に取られてしまう。
その人物とは生まれたばかりの息子に会おうと脱獄してきた、凶悪犯だった・・・

薬物依存に苦しみながらも娘を取り戻そうと懸命に生きる女性と息子に会うために脱獄してきた凶悪犯との人物像を上手く重ね合せた作品だとは思うが、どうにもどっちつかずな部分が多く、感情移入の対象にはならない
実際に起きた事件を基にしている作品だが、あまりにも演出がかった展開と宗教的要素が強すぎる点に納得がいかない

Captive

それにどこまでが脚色で、どこまでが真実なのかは定かではないが、あまりにも軽はずみすぎるストーリー展開だし、犯人を少し美化しているような印象も受け、悲劇的事件なのにもかかわらず、最終的にはすべてを''めでたしめでたし''でまとめてるのが、どうにも気に入らないし、不快感すら感じる
アメリカの宗教的な要素が多く組み込まれた作品というのは、何事も許されるという概念から、このような結末の描かれ方をされることが多いのだが、実際はここまで単純な話でないように思う
さらにはもしも、警察の対応なども事実ならば、アメリカの警察の無能ぶりを露呈させた結果とも言える

Captive

ともあれ、一人の女性が凶悪犯の心を変え、出頭にまで導いたという事実は素晴らしいし、奇跡のような事件
ならば、脚色や無駄な演出を加えずにひたすら事実を追及して描いてほしかったものだ
作品的には「善き人に悪魔は訪れる」のようなハウス・ブレイキング・スリラーに近い仕様だが、ドラマ性も高く、スリラーというよりも人間ドラマに近いかもしれない
何事もどっちつかずで、薄っぺらな脚本で描かれた、何とも疑問を抱かずにはいられない作品だった

主演は今をときめく、実力派俳優で、人質に取られる女性役は、ケイト・マーラ(Kate Mara)

Kate Mara

「ファンタスティック・フォー」「オデッセイ」など、知的な女性のイメージが先行しがちな彼女だが、こういう役も案外できる
薬物依存に苦しむという清楚な女性とは言いにくい役だが、本作の演技でさらに幅を広げた印象だ
アシュリーという人物の内面を上手く表現しているし、彼女の心理を表情だけで体現した見事な演技を魅せている

一方で、凶悪犯を演じるのは、デヴィッド・オイェロウォ(David Oyelowo)

David Oyelowo

彼もまたこれまでとは違う印象を受ける
彼と言えば、「グローリー/明日への行進」でキング牧師を演じ、高い評価を得た俳優だが、今回はそれとは裏腹に悪人の役
意外としっくりくるその演技はなかなかのもので、一筋縄ではいかない、犯人の深層心理をこちらも上手く体現していた

要するに俳優の演技は素晴らしく、実在の人物たちへの敬意を感じるのだが、どうにも作品自体にその点が欠けるという事
もっとしっかりとした作品として、もう一度映像化してもらいたいと思わせるような作品

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