[最新映画批評]''トレッキー''に捧げる・・・。「スター・トレック BEYOND」

Star Trek Beyond

今回は、大ヒット公開中「スター・トレック BEYOND(Star Trek Beyond)」の批評

ジェームズ・T・カーク率いるUSSエンタープライズ号は長旅から、最新鋭宇宙基地ヨークタウンに食糧補給のために立ち寄る。
そんな中、謎の異星人女性から仲間の救助を依頼されたカークは、仲間と共にに救助へ向かうが、そこへ船籍不明の宇宙船群が襲い、エンタープライズ号は破壊されてしまう。
辛くも難を逃れたカークだったが、クルーたちは捕虜として捕らえられ、絶体絶命。
しかし、不時着したその惑星には、驚くべき謎が隠されており、敵は刻々とヨークタウン侵攻を目論んでいた・・・

この「スター・トレック」というシリーズは、TVドラマとしてや映画として大変な人気を誇り、世界中に''トレッキー''なる根強いファンを持つシリーズ
それを「LOST」などの海外ドラマでその名を知られるようになり、昨年、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で大きな話題を呼んだのも記憶に新しい、J・J・エイブラムスが2009年より新しく映像化してきたのが、この新生「スター・トレック」
元々、「スター・トレック」のファンではなかったというJJが手がけただけに、ファンじゃなくても先入観なく楽しめるというのが、魅力の一つであった
JJらしいレンズフレアの効いた映像表現と宇宙という無音の環境を存分に活かした演出の数々で、熱狂的なファンでさえも納得の出来だった
続編である「スター・トレック イントゥ・ダークネス」でも監督したのだが、今作からは、「スター・ウォーズ」の関係で監督を降板してしまった
その後を継ぐ形で今回監督を担当したのが、「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」のジャスティン・リン(Justin Lin)
正直、これまで万人受けするシリーズとして築き上げてきたJJが監督をしないという部分に抵抗を感じ、ましてや、「TOKYO DRIFT」ほどの駄作を世に送り出してしまったリンが監督という部分もあり、全く期待感を持たずに行った次第である
率直な感想を言えば、そのような不安は払拭され、しっかりとJJイズムを継承した作品に仕上がっていると思う
これまで築き上げられた基盤をしっかりと踏襲し、また新しい要素まで組み込んできていた
今作で注目すべき点というのが、2つほどあり・・・
1つ目は、USSエンタープライズ号の船長ジェームズ・T・カークのキャラクター性

Star Trek Beyond

これまでのシリーズではどちらかというと向こう見ずで若々しく、危険に飛び込んでいくような人物像で描かれてきていたのだが、その彼も年を重ね、すっかり落ち着いた雰囲気になってしまったのだ
そこが今回の「BEYOND」では重要なポイントで、カークがまた情熱を取り戻すまでの道筋が描かれているのだ
正直なところ、カークの大活劇を楽しみに観ていた身としては、若干の退屈さを感じずにはいられないのだが、これもまた中休みと考えれば、しょうがないことなのかもしれない
なので、今回の「スター・トレック」には、あまり''動き''というものは期待しない方が良いかもしれない
2つ目は、往年のTVシリーズでスポックを演じたレナード・ニモイへの哀悼の意が込められている点

Star Trek Spock

これは「スター・トレック」というシリーズを作り上げた製作陣に対してと、ファンたちへの敬意が込められており、感動さえ覚える
また、この2つ以外にも、映像の美麗さや名作SF映画を彷彿とさせるような、数々の場面など、見どころもたくさんある

Star Trek Beyond

もちろんJJイズムを継承しているという代表的な場面であるクライマックスの宇宙船同士のチェイスシーンもあり、迫力は申し分ない
そんな中で、JJとジャスティンの違いという部分が色濃く表れたのが、テーマ曲の使い方にあり、JJは何かというとあの高揚感の増すテーマ曲を使い続けていたが、ジャスティンの場合は、『来るか来るか』と思わせておきながら、途中で区切ってしまっており、ラストで一気にその曲がかかった時の鳥肌というものは、これまで以上のものがあった
全体的に言うと、万人受けするSF作品というよりも、今年で生誕50周年という事もあり、「スター・トレック」を愛してやまない人たちに向けた作品に仕上がっており、これまで以上に''トレッキー''色強めということ

主演は2009年の1作目からジェームズ・T・カークを演じる、クリス・パイン(Chris Pine)

Chris Pine

若々しく活発な印象が強く、王道のヒーロー像を体現してきた役柄だが、先に述べたように、今回は落ち着いた印象を大いに受けた
それはカーク自身も年を重ねたというのもあるが、同時にクリス・パインという俳優も、若手から大人の俳優へと変貌を遂げている最中であるという事が要因しているように感じる
自信に満ち、クルーたちを引っ張るその背中からは信頼感が滲み出ており、どこまででもついて行けそうなオーラを醸し出している
2009年1作目当時は、荒削りな部分が多く見られた俳優だったが、これまで数多くの名優たちと共演し、また主演作が幾つも公開されてきたという事で、表情には貫録さえ漂わせていた

一方で、今作は主人公であるカークやスポックというよりも、クルーたちの活躍に焦点が当たっている印象があり、その中でも、特にスールーを演じるジョン・チョー(John Cho)が目を惹いた

John Cho

なんと今回彼は、ゲイのキャラクターであることが判明し、大きな話題を呼んだが、それが良い方向に作用している
実はこれまでそれほど好きなキャラではなかったのだが、娘の写真を片手に旦那と共に家路へと付く姿に感情移入せずにはいられなかった
そこには単純な''愛''があり、演じるジョン・チョーの任務中の表情からも家族を守ろうとする姿が存分に現れていた
アジア系の監督らしい挑戦的な演出が功を奏した次第である

カール・アーバン(Karl Urban)演じるボーンズやサイモン・ペッグ(Simon Pegg)演じるスコッティも、各々実力を発揮

Karl Urban
Simon Pegg

持前のコメディセンスを発揮し、箸休め的な存在であった二人で、特にペッグは脚本にも参加しながらも、決して自分を美化することなく、スコッティというキャラを掴んでいたのが印象的

また、決して目を離してはいけないのが、チェコフを演じた、アントン・イェルチン(Anton Yelchin)の最後の演技

Anton Yelchin

2009年にチェコフ役として抜擢された当時は、「ターミネーター4」のカイル・リース役とほぼ同時期に抜擢され、ここから注目若手俳優へと踊りでた
ロシア語なまりの英語で見事なまでになりきり、キャストの中で最も適任だったキャスティング
今作でも彼らしい小気味の良い演技が光り、改めて彼の実力を再確認できるパフォーマンスを魅せている
アントン・イェルチンという俳優が残したチェコフとしての最後の演技を目に焼き付けてほしい

そして、密かに注目していたのが、ジェイラ役のソフィア・ブテラ(Sofia Boutella)

Sofia Boutella

異色のスパイ・アクション「キングスマン」でも独特な存在感の女優として目を惹いたが、今回は予告の段階から、かなり注目していた
しかし、活躍度的にはそこまでではなく、中盤に少し活躍する程度
それでも彼女の魅力が発揮されていて、共演者のゾーイ・サルダナのように''特殊メイク女優''としての魅力が開花した印象
世界的なダンサーであるだけに、アクションも申し分なく、アクション女優として注目の存在だ

そして、今作の悪役として登場し、驚いたのが、イドリス・エルバ(Idris Elba)

Idris Elba

ほぼほぼ宇宙人メイクなので分かりにくいのだが、実は彼だったのだ
前作のベネディクト・カンバーバッチといい、人気の英国俳優を悪役として起用するこのキャスティングには脱帽だ
また、それが良いように作用しており、一筋縄ではいかない「スター・トレック」の悪役の心情を上手く体現している

''最後のミッション''という触れ込みだが、決して最終作というわけではなく、すでに4作目の製作も発表されている
そこでは今回色濃く描かれていた父親との関係などが描かれる予定で、ますます期待できそう
しかし、最近はSF映画がたくさん公開されており、少々飽き始めているというのも確かだ・・・

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